大方の予想通り、バンコク都知事は野党・民主党から出馬したアピラック氏が当選した。アピラック氏はこれまで表向きは政治の世界に関わっていない経済人である。TAオレンジのCEOなどを務め、イメージ的には潔白なイメージが持たれている。今回の氏の当選により、与党・愛国党(タクシン首相)は来年の総選挙に向けて、いよいよなりふりかまない対策が求められそうだ(いまでもやりたい放題だけどね)。タクシン首相は本心かどうか不明だが、氏の当選に「私と同じ経済人が政治の世界に入ってくることは大歓迎だ」と述べていた。
日本人に注目されていた特殊浴場王・チューウィット氏は3位。よく健闘したと思う。確かにテレビ討論会などや街頭演説にはよく出ていた。昨年からの一連の出来事で話題性があったのは事実だ。彼はこの選挙の後、何をやるのだろう。何もやらないと、間違いなく警察や政府に消されてしまうだろう(「消される」=「殺される」)。
さて、バンコクでは選挙の前日の18時から禁酒となる。禁酒解除は情報が錯綜していた。選挙終了の18時まで、とか、24時までとか。今回は日曜が選挙だったので、土曜18時から日曜の18時または24時が禁酒であった。飲食店はもちろんのこと、スーパーなどでも酒類販売が中止される(一部販売しているところがあったみたいだけど)。
土曜日は会社だった。一週間の仕事が終わったら一杯やりたいのがサラリーマンの心情。そこで土曜日はバンコク都の外側で酒を呑んだ。場所はランシットのフューチャーパーク。ここなら大手を振って酒が飲めるのである。友人達と酒を呑み、タイ料理に舌鼓を打ちながら「今夜のタニヤはどうなっているのだろう?」という疑問を抱いた。想像としては「きっと誰もいないガラガラなタニヤ」。そんなタニヤを見たくてその後タニヤへ移動した。
人はほとんどいないものの、何件かはしっかりと営業をしており、いつも通り呼び込みをしている。それにしてもかえってそれが空しさをかもし出している。なぜ空しいのか?。それは数少ないが営業している店は全て「連れ出し(オフともいう)」なのである。私達が利用する「連れ出し不可」という店は全てへ営業していない。また、営業しているこれらの店は「お酒は飲めない」という。「お酒は飲めないけど、女の子はいっぱい。すぐ女の子とOKネ。女の子とホテルへ行けば、お酒OKね」という呼び込みの声が、人通りの少ないタニヤ通りの闇夜に吸い込まれていく。そしてタニヤの入り口や路地の一部では、カラオケ嬢が数人ずつ固まっていくつかのグループとなって立っていた。つまり、お店は「休み」だが、女の子は「営業中」なのである。普段は店の中にいるカラオケ嬢たちが「お金」のために、タニヤへ出勤し「タチンボ」となっているのである。これも「タイの現実」のひとつである。私達は言葉もなく、空しい感情を抱きつつ、タニヤという「闇夜の街」をあとにした。
このような現実を認めない、あるいは「臭いものには蓋」的な考え方であるタクシン首相より、この現実を認めどう対応していくかと熱く語っていたチューウィット氏の方が説得力があったからこそ、今回、予想以上の票を集めたのだろう。タイという国からアンダーグラウンド経済(カラオケを含め)がなくなる日はまず無いだろう。ではこのアングラ経済をどうしていくかが、外国人から見ていても、今後のこの国の課題の一つであることは間違いない。そういえば、チューウィット氏、選挙の応援をしてくれた都民のために、例のSoi10のビアバー破壊跡地を公園などにして都民に提供するとしている。「チューウィット行方不明」とか「暗殺死体浮かぶ」などという記事は目にしたくない。
2004年08月31日
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